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地中の断面からの視点で、粒子の集まりでできた球根のような物体があり、その中に額から触覚が生えた裸の少女が膝をかかえて眠りながら回転している。ここでタイトルを出す。
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その球根の先から、光る根が生えてきて地上を目指す。
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地上からの視点に変わり、土の地面から芽が出る。
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その芽が急速に木に成長し(早送りのように)、一本の立派な大木になる。すこし異様な白紫に光る大木。
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場面が現代の住宅地に変わり、早朝に家の窓から小学6年生の少年が外を見ている。
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少年(音声解説)「僕には、僕にしか見えない木がある。見る度に形と色が変わり、その事を他の人に言っても、見えないみたいで、変に思われる。だから言わないことにしているけど、本当に見えるんだ。でもその木のある場所に行ってみるとそこには何もない。離れた場所から見るとまた現れる。」
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少年がすこし木から眼を離して、もう一度見ると木の色と形が変わる。
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そしてしばらく見ていると空から地面に向けて降り注ぐ素粒子(クォーク)が見える。その素粒子が木に当たると吸収する。少年は「まるでアンテナのよう。」と思っていた。
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少年はその木を見ていると何故かほっとする。安心と包容を感じて、いつまでも見ていたいと思い、日頃からよく見ていた。休日等に一日中見ていた時もあった。
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ある夜、少年はいつもと同じように木を見ていた。しばらく見ていると急速に光りはじめて振動する。その様子はいつもとは違っていた。そして少しすると木が消えた。眼を離し、もう一度見ても、もう木は存在していない。
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少年はすごく気になって、夜、家を抜け出し実際にその木のある場所へ向かった。
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その場所には木は無かった。しかし地面に白紫に光るものがあり少年が近づいた。すると、そこには穏やかに光る少女が倒れていた。生物的な衣をまとい眠っているようだった。(触覚は無い)
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少女の眼がゆっくり開き、その瞳を少年が見た瞬間、凄まじい衝撃と凍りつくような視覚的刺激を受ける。少年は身動きができなく、少女の瞳から眼が離せなくなる。そしてその瞳に吸い込まれる感覚を受けて、周囲が真っ暗になる。
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しばらくすると素粒子の流れが見えてきた。大量の素粒子が緩やかに動いていて、所々で渦を巻いている。まるで天気図の雲の動きのようだ。
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そのうち素粒子の流れの一つがこちらに向かってくる。幾多の素粒子が周囲を通り過ぎ、その素粒子の一つとぶつかり鮮やかな光が所々で弾け飛んで、画面が真っ白になる。
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そして暖色が広がり、何かに包み込まれるような暖かい感覚の世界になる。少年の心に恐怖心は無くなり、居心地のいい空間が広がっていた。
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そして暖色の世界が霧のように晴れる。そして少年の日常生活の映像が始まる。(数点の回想)
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日常生活A・・・少年が登校時に歩いている。その周りで「おはよう。おはよう」と挨拶が聞こえるが、少年に対する挨拶は無い。少年は黙々と歩いている。
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日常生活B・・・体育の時間終了後、水飲み場に数人の生徒がたむろして騒いでいる。少年が水を飲もうと近づくと、たむろしていた生徒が途端に水飲み場を去る。
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日常生活C・・・授業中に少年が視線を感じ振り向くと、数人の生徒がニヤつきながら見ていたが、途端に真顔で前を向く。
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日常生活D・・・少年は下校している時も一人で黙々と歩いている。家に帰ると誰もいなくて一人でご飯を食べている。
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日常生活E・・・そして自分だけに見える不思議な木を眺めている。
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日常生活の映像が終わり、意識が急速に後方へ進み、幾多の素粒子が曲線を描く。(逆ワープっぽい表現)
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そして少年の意識がもどり、夜の森の中にいて、眼の前には少女の顔がある。
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少女は全てを受け入れたようにやさしくあどけなく微笑む。
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少年は自分の人生の全てを垣間見られた気がして、気恥ずかしさと苛立ちを感じていた。
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そしてこの異様な状況への恐怖心が戻ってきて、その場を後退りながら少女から離れ、一目散に家に帰った。
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少年は家に帰ってから、あの木のあった場所を見ようとせずカーテンをすぐ閉めた。そして興奮が冷めず寝られずにいた。
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夕方に、少年は漫画を読んでいる。急にあの現象が気になり、もう一度、木を見ようと窓を開けた。木は無かった。少年は心のゆとりを失ったように思った。
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そう思うと、いてもたってもいられなくなり、あの木のあった場所に駆け出した。
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木のあった場所についた、けど何も無い。少年は息を切らしていた。途端に涙が溢れ出してきて、咳き込みながら蹲り、雫が地面に落ちるのを見ている。
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そして少年はもう一度前を見る。するとそこにあの少女の姿があった。
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少年「あっ」
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少女は丘の上から街を見ている
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少年は少女に近づく
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少年「あの君」
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少年は声をかける。少女は振り向く、初め、きつめの眼つきだけど、すぐ穏やかに。
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少年「君、名前なんていうの」
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少女しばらく間を置いて「・・・・mдΦ・・・・r§δ・・・・・zД・・」
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少年は少女が何を言っているか分からなかった。言葉というより音のようだった。
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でも何とか解釈しようと思い「ミ・・リ・・ザ」と聞こえた気がした。
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少年「ミリザ?」
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少女はうなずいた。
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少年「どこから来たの?」
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ミリザ「・・Эηzっと、ここにいるよ。」
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話し出しは分からなかったけど、すぐ理解できる言葉に変化した。
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少年「ここに?」
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ミリザはうなずいた。そして笑った。
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ミリザ「ここはいい?いい世界なの?」
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少年「・・・・・・・」
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少年はミリザの唐突な質問にすぐ答えられなくて考え込んだ。
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少年「・・・いい世界だと思う・・・でも・・・僕には合わないと・・思う」
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ミリザ「そうなの・・・・・ねぇ私に、この世界の事教えて。」
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少年「えっ君は・・・人間なのかい?」
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ミリザ「器の違いは問題じゃないわ」
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ミリザは微笑みながらそう言った。少年は意味をよく解らなかったけど、何故か納得できて、これ以上追及しなかった。
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ミリザ「教えてくれる?」
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少年「いいよ」
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少年はあまり難しく考えないで、簡単に答えた。そしてミリザと次の日の朝、同じ場所で落ち合う約束をした。(次の日の学校は休日)
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少年はワクワクしていた。
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朝、少年は楽しそうに森の丘を駆け上がる。正面にミリザがいて、だんだん近づいていく。ミリザも少年に気づき、こちらを向き笑っている。
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落ち合ってすこし話している様子をかなり引いた上空視点シーンから撮る。
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2人はコンビニに向かって街中を歩いている。
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少年がコンビニを指差し「コンビニに入るよ」
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ミリザ「コンビニ?」
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ミリザはコンビニというものを知らない。世の中の基本的な事は知っているけど、人間が作ったルールや物の知識が抜け落ちている所がある。
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少年「いろんな物があるんだ〜」
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少年は楽しそうだ。
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2人はコンビニに入る。
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中に入ると少年は次々と説明する「あれは雑誌、あれは飲み物で、あっちはおにぎりがあるよ〜」
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ミリザは雑誌コーナーの前へ立つ、すると何かに反応したように、瞳が白く光りだした。額には透明な触覚が見えだしてその先も光っている。様々な未知の情報があると察知したようだ。そしてコンビニにある全ての品物から素粒子が湧き出てきて、その全てがミリザの触覚に吸い込まれた。
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少年はびっくりしている。周りの客や店員には見えていないようだった。
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2人はペットボトルの飲み物を買って外に出た。
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2人は映画館に入った。上映中にまたミリザの眼が光り、周りの客から素粒子が湧き出て、ミリザの触覚に集まった。全ての客の感情の変化を読み取っているようだ。周りの客は何も気づいていない。
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2人はファーストフード店に入り、またミリザの同様の現象が起こる。その後、食事しながら2人が楽しそうに会話している。
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2人は図書館へ入り、ミリザの現象で膨大な素粒子が発生して、そのうねりが窓からの木漏れ日と重なりとても美しく、少年は見とれていた。
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2人は街並みを歩いている。そろそろ夕暮れ時になってきた。
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2人は森の丘へ戻ってきた。2人は丘から街を見ている。自衛隊のヘリが飛んでいて音が聞こえ、遠ざかっていく。
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ミリザ「この世界の事、教えてくれてありがとう」
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少年「あっいや、僕はそんな大した事はしてないよ」
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ミリザは少年の方を向く。
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ミリザ「今度は私が世界のつながりを見せてあげる」
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少年「世界のつながり?」
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ミリザはうなずく。
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ミリザは少年の両手を合わせて、両手で握り締める。
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ミリザの眼が白く光りだし、額から触覚が見えてくる。そして今回はそれだけではなく、ミリザの変化が続いていく、体が小刻みに振動し、腕や足の一部の皮膚から色鮮やかな羽毛のようなものが生えてくる。顔の形はそのままで皮膚の色が白紫に変わり、きつくアイシャドウを塗ったような様相になり、頭上や後頭部、背中から、昆虫っぽい飾りや仏像っぽい飾りが生えてくる。異様な感じと色鮮やかで綺麗な感じのする姿に変化する。
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少年は唖然としている。眼の前で繰り広げられている現象に驚いていて固まっている。
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2人の体は振動して、周りに黒い稲妻のような物が走り(ノイズみたいな)、光の帯が曲線に流れる。
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周囲の森の風景は赤黒く見える。そして意識がふっと下に抜ける感覚の後、周囲が真っ黒になる(ミリザの瞳をみて起こった一回目の時は、ミリザが少年の意識(魂)を見て、少年も同じ映像をみているだけだったが、今回は実際に意識(魂)の移動をしている感じ)
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真っ黒の空間に2人が浮かんでいて、次第に大量の素粒子群が見えてきて、うねりながら動いている。
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ミリザ「これは素粒子の海」
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少年「そりゅうしの海?」
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ミリザ「ええ、そうよ。この素粒子の一つ一つに、あなたのいる世界と同じような世界が存在するの」
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少年「世界が?その中に地球があるの?」
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ミリザ「世界の形、その在り方はそれぞれ違うの」
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少年「僕、何だかよく分からないよ」
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ミリザ「それでいいのよ。言葉や表現は表面、その中身は感覚で感じ取るしかないわ。君が見ているもの聞いているものは、君だけの見え方、聞こえ方なのよ」
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少年「・・・・う・うん・・・」
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ミリザ「彼らはつながる事を求めて、さまよう素粒子群よ。その為の器を求めているの」
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ミリザ「もうすぐ始まるわ」
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突然、真っ黒の空間に上からチャックで開けたように白く光る空間が見えてくる。(チャックの金具は無い)
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素粒子群が開いた白く光る空間を目指し移動し始める。
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ミリザ「私達も行きましょう」
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少年「うん」
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ミリザは少年の手を引き、白く光る空間の中へ飛んでいった。
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中に入ると色々な形のガラス球のような物が無数に並んでいる。
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そして後ろの開いていた入り口が下からチャックを閉めるように閉じる。
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ミリザ「ここは、器の部屋。様々な形の器があるの、でも中は空っぽ」
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一緒に器の部屋に入っていた素粒子達が、器の中に入っていく。
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少年「そりゅうし、中に入っていくよ」
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そして一つの器が素粒子で満たされると、その中の素粒子が生き物の形に変化する。その形は様々で人間の形や、動物の形、植物の形、微生物の形、惑星の形、見たことの無いモンスターのような形もある。でも皆、真っ白で無機質な感じがする。(マネキンのよう)
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少年「いろんな形になった」
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ミリザ「器は魂の入れ物、素粒子が集まると魂になるの、でも魂は形を保てないので、器が必要なの」
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少年「そりゅうしの中には世界があって、そりゅうしが集まると魂になるの?」
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ミリザ「そうよ。そうしてつながっているわ」
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少年「器の中の色々な形、動かないよ」
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ミリザ「彼らは魂はあるけど、まだ開放できないの、自我や意思、本能がまだ芽生えていないわ」
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それぞれの生き物の形の下に、円形の穴が開き、その中に落ちていく。
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少年「皆、落ちていくね」
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ミリザ「皆、それぞれの体系、在り方によって振り分けられているの」
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ミリザ「私達も行きましょう」
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少年「うん!」
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少年は興味を持っている。
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2人の足元に円形の穴が開き、その中に降りていく。
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長いチューブのような空間で、2人はその中を進んでいる。(チューブ壁はデザインチックに、色はモノトーン)
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しばらくして、太い動脈のようなチューブにつながっている。そこには先ほどの器がたくさん流れている。でもその器の形は微妙な違いがあるものの皆似ている。そしてその中の生き物の形は人間ばかりである。(男形Y女形X両方いる)
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ミリザ「ここは、君と同じ人間の器ばかりが流れている。人間生命への道筋なのよ」
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少年「この器達が、僕と同じ?」
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ミリザ「そうよ。でもまだまだ不完全なの」
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この太いチューブ空間は様々な小さなチューブとつながっている。そして小さなチューブから同じような器が合流してくる。急に太いチューブ内壁に大きな穴が開いて、大量の器の群れが合流してくることもあった。道筋そのものが常に変化を繰り返している感じがする。
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2人が器達と一緒に進んでいると、数個の器が太いチューブ内壁に数回ぶつかり器が壊れる。すると中の人間の形がすぐ素粒子に戻り弾けてチューブ内壁に吸収される。器と器がぶつかって同様の現象が起こっているのもある。
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2人がその様子を見ていた。
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少年「あれはどうしちゃたの?」
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ミリザ「あれは道筋の途中で、また元の素粒子に戻ってしまって、素粒子の海に帰っていくわ」
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少年「・・・・・・・」
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そして2人はしばらく器達と一緒に太いチューブ内を進んでいると先に光が見えてきて、近づく度に大きくなる。出口のようだ。
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器達が、その光の中に入り込んでいく。ミリザは少年の顔を見てうなずく、少年も決意を決めたようにうなずき、2人は光の中へ。
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中に入ると、幾何的な造形物に囲まれた広場のような空間がある。入ってきた器達が次々と綺麗に整列していく、そしてその前方には造形物は無く、様々に色付けした糸のような光が数本ある。ほつれたり、絡み合ったりしている。
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その糸以外は色付けされてなくモノトーンの世界。素粒子の海、器の部屋、チューブもずっとモノトーンでしたが、少年とミリザだけは色が付いていた。
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ミリザ「ここは、本能の広場」
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少年「本能・・・?」
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ミリザ「ええ、ここで魂の開放、覚醒が始まり、それが本能となるのよ」
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ミリザがそう言ってすぐ、子供達の笑い声のような音が聞こえる。その音は耳から入ってくる感じではなく、神経に響いてくる感じ。
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色の付いた数本の光の糸が一つにまとまり、極小の光の点になる。その光の点は七色に色付けされている。
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そして突然爆発したように、様々な極彩色が飛び散る。
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少年「うわっ」
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ミリザ「大丈夫よ」
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そしてその色が広場に膨張し色付けていって、それと同時に「ハアー」という女性の声のような、神々しい音が聞こえ、この広場にある全てのものが色づけされた。
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器は無くなっていて、その中にあった人の形にも色が付いているが、一体に一色ベタ塗りシルエットのように付いていて、それぞれ一体ずつ色が違う。
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ミリザ「これで彼らに、本能が生まれた。でも自我や意思はまだないわ」
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少年「あっ」
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人の形は動き出し、歩き出した。
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少年「動いてる」
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ミリザ「彼らは、無意識に動いているの、本能のままに」
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広場正面の空間に一本の道ができる。その道の左右は空間で、下を見ると道の壁だけが底なしに続いている。
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人の形達が道に向かって歩いている。そして道の上をゾロゾロと歩いている。
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ミリザと少年は浮遊しているが、人の形達と一緒に道を進む。
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少年は後ろを振り返り、誰もいない広場の方を見ると、広場に付いていた色が消えていっている。でも道には色は付いている。
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道から押し出されて、下に落ちる人の形も何体かいる。そして下の方で素粒子に戻り、道の壁に吸収される。
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しばらく進むと道の先に巨大な円形の地面とつながっている。(円形の地面の周囲には壁は無く、空間。色付き)
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人の形達が円形の地面に進入し、それぞれ散らばっていった。
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ミリザと少年も円形の地面に辿り着いた。
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少年「ここは?」
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少年の方からミリザに聞いてきた。
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ミリザ「ここは、船着場」
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少年「船着場?」
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ミリザ「もうすぐよ、見てて」
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全ての人の形達が円形の地面に到達した。
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そして不思議な音と共に、流線形の楕円体に長い円錐が尻尾のように後方に付いている物体が1個出現した。一見おたまじゃくしの形の宇宙船みたいに見える。でも生物的でもなく、ゴツゴツした複雑な機械構造もない、白銀の物体。
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さらに次々と不思議な音と共に何個も何個も現れる。
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ミリザ「これは船よ、人の形を運んでくれるわ」
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船の艦首横側から、まるで口を開けるように角の丸い長方形の穴が開き(口と言っても歯とかは無い)、人の形達が本能的にそこに向かう。そして数隻の船の入り口のそれぞれに人の形達の長蛇の列ができていて乗り込んでいる。
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全ての人の形達が乗り込み、船の入り口が閉まる。
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少年「皆、船の中に入ったよ」
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そして全ての船が地面からすこし浮き上がり、振動する。しばらくして急にロケット花火のように、ものすごいスピードで飛び出す。(ジェット噴射表現無し)
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ミリザは少年の手を取って「追いかけるわよ」
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少年「うん」
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2人も船以上のスピードで飛び出し、数隻の船に追いつく。
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いつの間にか周りが生物的な天井と地面のある場所を飛んでいて、その天井と地面の間を数多くの生物的な柱でつながっている。船団はその間をすり抜けて飛行している。
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中には柱にぶつかって、異様な爆発と共に素粒子に変化しているのもあり。柱に少し、かすってそのまま堕ちていく船もある。
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少年「す・すごいスピードだね」
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ミリザ「大丈夫?」
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少年「うん」
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少年は好奇心に満ちた顔つきだった。
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しばらく飛んでいると、柱の場所を抜ける。そして周りが赤黒い空間に変わる。黒い稲妻がノイズのように所々で走り、光と闇の帯が曲線に流れる。船団にはものすごい振動が起こっている。
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ミリザ「次元の狭間に入ったわ」
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船団の中のいくつかの船が振動に耐え切れず内部爆発を起こし、素粒子に変化していく。
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そしてしばらく船団と2人が飛んでいると、霧が晴れるように次元の狭間を抜ける。
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すると何と、あの森の丘の上空に出る。2人の周りには船団が無い。
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2人が少しずつ下降していくと、森の丘で固まっているミリザと少年が見える。
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そしてさらに固まっているミリザと少年に近づき、意識(魂)と肉体が一致する。
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画面真っ黒でトクン・・・トクン・・・トクン・・・ドックン!!、心臓の音が徐々に聞こえてきて、最後に大きくなる。
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少年は視覚を取り戻し、眼の前にミリザがいる。
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2人は向かい合って両手を中央に固めてつないでいる。あれから時間は全然流れていないようだ。
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ミリザの姿も変身後のままで、2人とも真顔でお互いを見ている。
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しばらくして少年が話し出した「ねぇミリザ、あの船はどこへ行ったの?」
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ミリザ「あの船は、君の体の中よ」
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少年「えっ僕の・・」
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ミリザ「そうよ、君の体の中に有機物として、発生しているわ」
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少し間があく。
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ミリザ「あの船は、これから、まだまだ困難な障害を乗り越えていかなければならないわ。そして君自身が乗り越える障害でもあるわ」
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少年「僕自身の障害・・・」
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2人は手を放し、夕暮れの街の方を向く。
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そしてしばらく見つめている。鳥が群れを成して飛んでいる。
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ミリザ「私達の見た過程、構造の表面は、変化を繰り返し、私達自身が作り出した物でもあるの、そこには君の意識も混入していたのよ」
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少年「僕の・・・」
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ミリザがうなずく。
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ミリザ「でも、中身の部分は決して変わらない。その中身が全ての生き物を形作り、つながっている」
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飛んでいる鳥の群れが遠くへ行く。少年はそれを見ている。そして少年の顔つきが、何かを悟ったように自信に満ち溢れる感じになる。
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そしてしばらく2人は、街を見ている。そして日が暮れる。
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ミリザ「もう行かなきゃならないわ」
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少年「どこに」
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ミリザは少年の方を見ながら後方に歩く
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ミリザ「この世界はもうすぐ、仮のつながりから、正式なつながりへと移行するわ」
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そして元々、木のあった所まで歩き、少年も後を追う。
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ミリザ「私は次の新たな世界に行かなければならないの」
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少年「もう会えないの?」
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ミリザ「・・・・そうね・・・そうなるわね」
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ミリザは悲しい顔をした。
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少年はすこし涙を浮かべた。
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突然ミリザの体から、眩い閃光が走る。そしてその閃光は頭上をどこまでも登る。その閃光の本筋から光の枝がいくつも分かれて、まるで木のような閃光がずっと天まで続いている。そしてミリザの体が浮き上がる。
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ミリザ「でも大丈夫、きっと会えるわ。だって私達はつながっているんだもの」
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少年の涙が一筋、頬をつたう。でも怖じた風では無く、むしろ堂々としている。
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少年「うん、きっとだよ」
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ミリザの体が登り続けている。
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ミリザがうなずき、そして微笑む。
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少年「きっとだよ〜〜〜」
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ミリザの体がかなり上にのぼっていたので、少年が声を上げる。
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そして木の形の閃光が下からすっと消えていく、それと共にミリザも消える。
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すこし素粒子が漂って残り、それも見えなくなった。
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少年は前を向く、堂々としている。そして森の丘をゆっくり歩いて降りていく。
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そして少年はミリザの言葉を思い出していた。
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「あの船は、これから、まだまだ困難な障害を乗り越えていかなければならないわ。そして君自身が乗り越える障害でもあるわ」
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「でも、中身の部分は決して変わらない。その中身が全ての生き物を形作り、つながっている」
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「でも大丈夫、きっと会えるわ。だって私達はつながっているんだもの」
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少年は歩いている。
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そして少年は、ぱっと笑顔になり、走り出す。
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少年は家に向かって走っている。
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場面が変わり、土の地面を映している。
- そしてニョキっと芽が出る。