まず最初に、この企画を思いついた経緯をいいますと、単純にムービーを作りたいという気持ちがありまして、そしてどんなムービーを作ると考えたときに、意外性のある作品、新しい作品というふうに最初は考えました。でも最近では意外性を狙う作品は多数あり、それを狙う方が自然な流れになってきていると思います。

 私は「意外性」というものを、あまり意識せずに、単純に理屈ではなくインスピレーションで感じる美しい映像を作りたいと思いました。インパクト狙いや、激闘アクションや、激しい効果などが一切無く、まるで環境ビデオみたいに流れるように映像が通り過ぎていって、観終わった後に何か頭に残っているような映像で、けどそこにストーリーが無いわけではなく、さりげなく入っている。そういうムービーを作りたいと思います。

 そこでどういう手段で表現するのかと考えたところ、最初は3Dでの表現を考えましたが、3次元の表現は、このムービーイメージのコンセプトに合わないかなと思っています。もちろんセルシェーダーを使えば合うと思いますが、Flashなどで絵本のような感覚で作るのも面白いかなと思っています。(現在Flash勉強中ですが・・・)

 現段階でのムービーイメージを箇条書きにして提示しますので、是非ご覧ください。読み終わった方は感想など掲示板に書き込んでいただけると幸いです。

 

             「散歩」ムービーイメージ箇条書き

1 声、効果音なし、BGMはクラシックの「カノン」か、「主よ人の望みの喜びを」のイメージに近い著作権フリーの音楽が流れ初めて、タイトルが出る。

2 工場で流れ作業の仕事をしている女性が主人公で、彼女はアパートに一人暮らしをしていて、仕事に行き、帰ってきては寝るという生活 を繰り返している。

3 仕事帰りの夜、彼女の後ろから黒い服を着た少年がついてくる。それに気づく彼女は、すこし驚いた様子を見せるが、気にせずにそのまま歩く。

4 彼女がアパートに着いたとき、何故かそのまま少年を部屋に入れる。

5 彼女は少年にカップラーメンを作ってあげ手渡し、一緒に食事をする。

6 少年との共同生活が始まる。

7 彼女は残業せずに、すぐ家に帰るようになり、少年との共同生活を楽しんでいた。

8 共同生活シーン
(ア) 少年がベッドの上で飛び跳ねているのを叱る彼女。

(イ) ゴキブリが出て悪戦苦闘する二人、なんとか殺虫剤で仕留めることに成功し、ゴキブリが裏返って足をピクピクしている、その時、少年が右手に着けている手袋をはずし、中から暗雲の渦巻いた様な黒い手が現れて、ゴキブリに触れると一瞬の内に、ゴキブリが右手に吸い込まれた。(※重要シーン)

(ウ) はしゃぎ疲れた二人が眠っている。

9 休日、二人は散歩に出かける。

10 近所の人が少年のことを“あの子だれ?”という目で見てくる。

11 近所の犬が少年を見て、ものすごく吠える、それを不思議そうに見つめる少年。そして彼女が少年の手を引き、その場を離れる。

12 通り道の駄菓子屋で、彼女が少年にアイスキャンデーを買ってあげる。

13 トンボをアイスキャンデーの棒を持って追いかける少年、その少年を追う彼女。そして少年のアイスキャンデーの棒の先にトンボがとまり、少しして飛び去る。

14 しばらく歩く。(長回し)

15 通り道の公園に入る。

16 滑り台に興味を示した少年が滑り台を指差す、彼女は軽くうなずき、滑り台をやってみせる。そして少年がとても喜び、彼女がやったように滑り台を何度も滑る。

17 滑り台と同じように、ブランコ、砂遊び、鉄棒をする二人、鉄棒では少年が逆上がりを失敗し、尻餅をついたのを見て笑う彼女。

18 少年がジャングルジムを見ると、ジャングルジムの上に別の子供が登っており、遠くから母親に呼ばれて、その子が降りて母親の方へ走っていく。

19 今度は少年がジャングルジムに登り、彼女を呼ぶ、そして彼女もジャングルジムに登り、二人が反対方向を向き景色を眺める。

20 この公園は高い位置にあり、ジャングルジムの上から海が見渡せるようになっていて、少年が海を指差し、彼女が間を置いてうなずく。

21 海へ向かう二人が、下り坂を歩いている。

22 海に近づいてきて、海岸より一段高い高台があり、その端には手すりがあり、その手すりの上を歩く少年、彼女が「あぶないわよ」と注意している様子。(口パクで)

23 高台が突き当たりになっていて、手すりが直角に曲がっている。その上を歩く少年も、手すりに沿って曲がり、丁度、彼女と向かい合わせの状態になる。

24 彼女も足を止める。

25 少年がゆっくり右手の手袋をはずし、黒い手を見せる。

26 しばらく見つめ合う二人。

27 そして、心を決めたように彼女がゆっくり歩き出し、少年の方に向かい、少年の右手に触れる寸前で場面が変わる。

28 彼女の住んでいたアパートに場面が変わり、彼女の家賃の滞納の回収のため大家さんが彼女の部屋の扉を叩く。(27から月日が流れている)

29 大家さんが、カギを使い中に入ると、誰もいなくて、テーブルの上に一枚の絵が置いてある。

30 その絵は幼い子供によって、黒い服を着た少年が描画されていて。そして、その右上には、小学校の名前と学年と彼女の名前が書かれてある。そこでこのムービーは終わる。

 



 絵は彼女が小学生の頃に、死神のイメージで描かれた物で、彼女が出かける前に、遺書のように自分の生前の痕跡を残す為、置いていった。(少年が本当に死神なのかは不明、ただ、「少年=無」という概念)

 絵の少年が現実世界に具現化され、彼女の前に現れてから、彼女は死を覚悟していたが、実際に死んでしまったのかは謎。(死というより無といった方がいい)

 少年の具現化の原因は、彼女の仕事に行き、帰ってきては寝るという孤独な生活の中で、自分の「無」を強く想い願ったためにある。

 決して暗く悲しい部分だけを描くのでは無く、少年との楽しい思い出を強く打ち出し、絶望しきれない彼女の気持ちと、変化への希望を描き、最終的に彼女が何を願ったかは、この作品を見た人それぞれの判断に委ねてしまう。

 

<完成後の解釈>

 最後の絵ですが作る前は、”彼女が出かける前に、遺書のように自分の生前の痕跡を残す為に置いていった”という設定だったのですが、彼女が少年と部屋で過ごしている時に、少年に見せるために奥から引っ張り出した(思い出話をしていた)。結果的に遺書のような形になった。

 絵の少年が現実世界に具現化されたのではなく、彼女の幼い時に少年が現れ、よく遊んでいたが、大人になると、少年は現れなくなっていた。彼女の幼い時に少年が現れたのは、彼女が寂しさを感じている時だった。

 彼女の心境は、単調な毎日に孤独を感じてるいう気持ちだけではなく、過去に何かあるのかも知れないが、それは説明しない、それはこういう作品だという決定打をあえて避けて、普遍性を高めたかったからです。責任逃れに思われるかも知れないけど、私の中には一応答えはあります。がそれは一つの答えに過ぎなくて、観た人間によって重みや解釈が変わるし、何も無くても、何も無い自分という意味がある。いずれにしても自分がこの世界に合わないと感じ「無」を願っていた。

 少年はやはり死神だと言い切った方がいい。その死神の存在は彼女にとっては忌々しいものではなく開放への入り口である。でも黒い手に触れたのかは分からない。この作品で描かれているのは彼女と少年の楽しい思い出であり、一瞬の幸せである。陰の部分は背景にあるが、それよりも彼女の楽しいひと時を描いた作品です。

 

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